生ハイチュウを生み出したのは俺だ!!!!
「生ハイチュウ」という2014年にセブンイレブンで期間限定発売された商品があった。
この商品に関し、ぼくは今までずっと胸に閉まっていたことがある。
絶対に信じてもらえないだろうし、証拠もない上、怖くて誰にも言えなかった。
森永製菓という大企業を敵に回しかねないからだ。
日本の企業の中でも有数の大組織だ。
本気を出せば、僕のようなポンコツ野郎は一瞬で社会の闇に葬り去られてしまうだろう。
それでも勇気を出して言おう。
生ハイチュウを生み出したのは俺だ!!!!!!
生ハイチュウを作ったのは俺なんだ!!!!!!
2010年、僕も就職活動というものを他の学生と同様行っていた。それはそれは真剣にやっていた。
NHKでたまに見るサバンナのヌーの群れの如き、あの黒スーツの集団の中に身をおき、ESという不毛な書類を何枚も作成しつつ、会社から送られてくるメールに一喜一憂しながら、虚構の希望に目を輝かせていた。
僕は物理学を専攻しながら、何も関係のない森永製菓の開発職への就職を希望していた。志望動機は「なんか楽そう・鶴見勤務」以上だ。
必死にエントリーシートに嘘丸出しのきれいごとを書き、見事不合格となった。
それでも納得できない僕は、直接採用担当者に電話をした。
お菓子への熱さを語ることで、ワンチャンス不合格撤回を目論んだのだ。
実際、僕はお菓子好きとして、ひとつだけ心から伝えたいことがあった。
生キャラメル宜しく、生ハイチュウを作ってほしいという願望だ。
僕の考えた「生ハイチュウ」というものは、ハイチュウに生クリームや濃厚な果汁を加えた通常のハイチュウよりもグレードの高いハイチュウだ。酸味がありつつもクリーミーな味わいで、口の中でまろやかにとろけるのが特徴だ。
その僕の考えた生ハイチュウへの熱い思いを、開発でも何でもない採用担当に伝えるという暴挙ともとれる行動。
しかしなりふりなど構っていられない。
そのくらい当時の僕にとって、「なんか楽そう・鶴見勤務」というのは魅力的だったのだ。
頭がおかしいと思われてもいい。
僕は0.1%の不合格撤回に賭けた。
結果、僕は日に二度の敗北を喫することとなるが、最後の最後まで熱い思いを伝えた。
「私はここで終わりかもしれませんが、生ハイチュウのアイディア、ぜひ開発担当の方へお伝え頂けないでしょうか?」
「わかりました。伝えておきますね!ありがとうございます。」
「この熱い思いが伝われば私は本望です。お話を聞いてくださり誠にありがとうございました。失礼します。」
そう言って電話を切ると、僕はケータイを地面に叩きつけた。
その4年後、2014年のセブンイレブンで僕は「生ハイチュウ」の発売を知ることとなる。
僕はひとりお菓子コーナーで立ち尽くし、鼻息を荒立てていた。
僕が考案し、名付けた「生ハイチュウ」が今こうして商品として目の前にある。
あの電話が4年前。いくらなんでもあの電話よりも前から生ハイチュウの企画があったとは思えない。
あの時の僕のアイディアが発端に違いない。
この俺こそが発案者だ!!!
妄想は膨らんでいき、僕の脳内は「インセンティブ」という言葉に支配された。
要は金だ。
売り上げ次第では、発案者である僕は報奨金がもらえるかもしれない。
200万か。
100万か。
2万でもいいから欲しい。
ください。プロテインでいいからください。
プロテインを下さい!!!!!!!
おわり