ぱいんはうす岸英明の「世界はグーチョキ天パー」ブログ

ぱいんはうすの岸英明です!悩める天然パーマ達の味方です!世界はグーチョキパーで皆違うからあいこでしょ?ふんわり日常の思ったことを書いていきます。

背もたれの3番目に人のマーク

寝言。


それはその人間の心理や思想、それらが無意識のうちに顕になる瞬間だと言ってもいい。



大学生時代、今でもはっきりと覚えている程、印象深かった寝言がある。


その日、翌朝にテストを控えていた同じ学科の僕と北脇は理学部棟に忍び込み、夜な夜な勉強を始めた。


勉強と言っても、物理学科の「底辺」と呼ばれるグループに属していた僕らは、トップ層の連中から集めたノートのコピーと過去問の模範解答を広げ、その教授の出しそうな問題を傾向と対策を元に、ひたすら覚え込むという作業。所謂、一夜漬けである。


とにかく細かい事は考えず、僕らは鬼の形相でテストのための勉強をした。半期の遅れをたった一晩で巻き返すには、目や鼻から血が噴き出す程の常軌を逸した集中力を必要とする。


このφは何なのか。このψとは何か、いやそもそも何と読むのか。何故-∞~∞で積分しているのか。てか全体的に何なのコレ。
もはやそんなことを気にしている場合ではない。こう来たらこう書く。機械的にそのパターンを身体に染み込ませていく。



そのうち北脇が力尽きて寝てしまった。仕方あるまい、それほどその日の一夜漬けはレベルが高く過酷を極めた。



深夜3時に差し掛かった頃だろうか。



机に突っ伏していた北脇が突然ムクッと起き、寝言を発し、再び眠りについた。
焦点も定まらず、脱力しきった表情で彼は確かに言った。

「背もたれの3番目に人のマーク」






背もたれの3番目に人のマーク???




僕はただただ恐怖に震えた。深夜の大学の教室にたった二人。そしてこの意味不明な寝言。脅えない人間が一人としているだろうか。


背もたれの3番目に人のマーク。


疑問だけを残し、北脇はまた机に突っ伏している。


教室内の椅子の背もたれを探してみても人のマークらしいものは見つからない。というか人のマークとは一体何なんだ。いや、そもそも背もたれの3番目という概念からして理解できない。


背もたれの3番目に人のマーク。


よく分からないが、僕はひとまずノートの片隅にメモした。


もしかすると、これは学問の神様が北脇の肉体を通じ僕に与えてくれた何かのメッセージかもしれないのだ。



その寝言を聞いて以降、「背もたれの3番目に人のマーク」という謎のメッセージにより、テスト勉強への集中力は一気に途切れた。このメッセージの意味を考えれば考えるほど思考の迷宮に入り込み、僕は危うく発狂しかけた。



結局、僕は朝のテストの時間まで一睡もせず、目を血走らせながら考え続けていた。
「背もたれの3番目に人のマーク」とは何か。


目覚めた北脇にその寝言について尋ねても、意味不明だと言うばかり。


結局、この件は完全に迷宮入りし、僕はテストに失敗した。



おわり

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