ぱいんはうす岸英明の「世界はグーチョキ天パー」ブログ

ぱいんはうすの岸英明です!悩める天然パーマ達の味方です!世界はグーチョキパーで皆違うからあいこでしょ?ふんわり日常の思ったことを書いていきます。

ひいおばあちゃんの話~藤枝市最強の入れ歯

僕は生まれてから大学に行くまで、実家でひいおばあちゃんと一緒に暮らしていた。

 

ひいばあちゃんの名前は「岸はま」。

通称おはまさん、もしくはMCハマー。明治生まれ。

曰く、生きた化石
曰く、現存する最古の肉食生物。
曰く、藤枝市最強の入れ歯。

主に食していたのは、まぐろの刺身とファミリーマートのフライドポテト(サラダエレガンス味)だった。

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僕が高校生の時には、おはまさんは93才くらいだった。
なかなかクレイジーではあったが、かなり元気で毎日庭の掃除や草むしり、昼寝、謎の縫い物などをしていた。

老齢の割りに力が強く、総合ルールで立ち合った際、僕は腕ひしぎ十字固めを極められ完全敗北した。

どれだけクレイジーだったかと言えば、食事の締めに茶碗に自分の入れ歯を入れて、
熱々のお茶をかけてそれを飲んでいた程だ。完全にエコブームを先取りしていた。

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そんなおはまさんは同じ話を何度も聞かせてくれた。というか勝手に話してきた。

その中でもよく話してくれたのは、戦争の話だった。
防空壕に入ったとか、芋のつるを食べたとか、戦争時代の様々なつらい経験を聞かせてくれた。

そうした話を通して、僕は平和の有り難さ、命の尊さや大切さを学んだ。

 


そんなある日、実家の廊下に一匹のカナブンが迷いこんできた。
カナブンは電灯や壁に体当たりをかましながら狂ったように飛んでいた。

すこぶるうるさかったが、狂ったカナブンは子供だった僕の手に負えそうもなかったので、藤枝市最強の入れ歯「おはまさん」を召喚することにした。

 

「ねぇねぇおばあちゃん、廊下に虫がいて怖いよ」


「ほいよ」

 

それだけ言うと、おはまさんは謎の縫い物を止め老眼鏡を外し、立ち上がった。
最短距離で廊下に向かうと、飛んでいるカナブンを指差し「これかのぅ?」と言った。


僕が頷くや否や、おはまさんはダルビッシュ顔負けの腕の振りを見せ、素手でそのカナブンをはたき落とした。
そして弱ったカナブンを掌に乗せ、僕に見せてきた。


「ほい、これでいいかのぅ?」


「うん!ありがとう、おばあちゃん!」


そう答えると、外に逃がすと思っていた僕の予想に反し、
突然おはまさんは僕の目の前でそのカナブンを握り潰した。


ベキ!メシメシ!バキ!ベキ!


「え???!!!!!!」


僕は狂気を感じ、喉が渇き、足がすくみ、その場から動けなくなった。

 

命の尊さを語っていたおばあちゃんは、虫の命など屁とも思っていなかった。

 

 

その後日、おはまさんは再びダルビッシュ並みの腕の振りで素手でゴキブリを叩き潰すが、それはまた別の話。

 

 

おわり